上田市民の山として親しまれ、老若男女を問わず、気軽に登山できる太郎山。標高1164メートル(語呂合わせで“いいむし”)。山頂付近には太郎山神社があり、古くから信仰も集めてきました。
毎年GWには日本初の都市型登山競争「太郎山登山競争」の競技コースとしても活用され、多くのランナーが山道を駆け登ります。
「太郎山保存会」の清水正行さんに案内をしてもらいながら、ゆっくりたっぷり太郎山の魅力に触れてきました。
一般ルートの表参道と裏参道を登る
太郎山周辺の登山ルートは全部で13本あります。今回は一般的なルートで、行きに“表参道コース”、帰りに“裏参道コース”を歩きます。
表参道コースは、上信越自動車道太郎山トンネル口のすぐそばに登山口があります。難易度は中級で、ゆっくり山頂を目指して1時間半ほど。平均して登りやすい山道ですが、所々に急な坂もあり、心して登る必要があります。
目印になるのが小さな石祠とともにある“丁石”。一丁およそ100メートル。表参道は、太郎山神社までの間に24の丁石が置かれています。
坂道は真っ直ぐ歩かず、ジグザグを描くように左右に斜めに歩くのがコツ。石の上や湿った所は滑りやすいので注意が必要です。
山頂目前、太郎山神社の真っ赤な大鳥居をくぐったら、左側の坂を登って社務所前の展望ベンチへ。いきなり視界が開け、広い空と山並み、そして眼下に上田の街が広がります! 疲れも忘れて思わず深呼吸。
石段を登って本堂にお参りを済ませたら、山頂へはもうあと5分ほど。登り切った頂上には可愛らしいお地蔵さんが待っていました。
山頂からも雄大な景色を堪能できますので、その景色をおかずに、持ってきたお弁当でランチタイムもおすすめです。
帰り道は、草花や野鳥、運が良ければカモシカとも会えるチャンスがある裏参道を歩きます。赤い大鳥居の横から裏参道登り口の黄金沢に続くルートで、片道約60分ほど。山頂整備のため造成された道でもあり、道幅は広めで、こどもや初登山者でも歩きやすい初級コースです。
途中には太郎山の民話などが書かれた案内看板がたくさんあるので、一つひとつ見ながら歩くのがオススメ。山野草も多く、取材に訪れた7月中頃は玉紫陽花が咲き始めていました。
二つのルートとも木漏れ日が差し込み、時折吹き抜ける風にホッと癒される道のりでした。
参道沿いの見どころ6選
1. 表参道沿いに見られる堀切
太郎山には山城跡があり、堀切は、山城に用いられる防御のための土木建築。一見すると水の流れた後にも見えますが、山肌に2本の溝を掘って敵の侵入を防いだのだとか。
2. 石の鳥居
表参道のちょうど中間地点あたりに現れる石の鳥居は存在感抜群。立派な石灯籠を携え、なんだかすっと背筋が伸びます。周囲には多くの人の名前が刻まれており、太郎山信仰の深さが伺えます。
3. 山の神
表参道の中ほどにある山の神様。登山の無事を祈ってしっかりお参りしました。
4.太郎山神社
現存する建物は明治5年(1872)に建立されたもの。本殿の下にはさらに古い石の祠がありますが、文献は残っておらず、正確なルーツは分からないのだとか。
「神楽が残っていて、天狗や翁が出てくる山伏系の舞を伝えています。現在は五穀豊穣の神として、5月に神楽殿で奉納が行われます」と清水さん。年末年始は保存会のメンバーが社務所に詰め、雲海の向こうにご来光を迎えるのも地域の伝統です。
5.見晴らしスポット
裏参道の途中には、坂城町を望むベンチが置かれています。ここは風の通り道で休憩にぴったり。
6.金明水
裏参道の途中には、2箇所に水が染み出している所があります。タンニン多めの渋い水で飲用にオススメはできませんが、触れてみるとひんやり冷たく気持ち良いです。
押さえておきたい太郎山の基本のき
表参道、裏参道の登山口までは、車で行くのがベスト。
裏参道の入り口(黄金沢)には10台ほど駐車場の用意があります。表参道には専用駐車場はなく、登山口のそばに車の展開スペースと車の退避場所があります。通行の妨げにならぬようご注意ください。
トイレは山頂付近、赤い大鳥居の横と社務所の横にあります。立ち寄るのをお忘れなく。
登るときには熊鈴やラジオなどを持ち、なるべく数人で、初心者は肌の出ない格好が良いとのこと。足元は普段のスニーカーでも、十分に行って帰ってくることができました。
また、今回のように行きと帰りで表参道と裏参道ルートの両方を歩く場合は、登り口(表参道:山口)と降り口(裏参道:黄金沢)が違うので要注意。山を降りて、降り口から登り口まで林道を30分ほど歩く必要があります。体力と相談してルートを検討してみてください。
この日歩いた歩数は、手元の万歩計で1万6千歩! 帰りは市内各所の日帰り温泉でゆっくり疲れを癒やしましょう。広がる景色と森の緑に癒され、太郎山が愛される理由を体感した1日でした。
太郎山登山口へのアクセス
表参道、裏参道登山口ともに上田駅または上信越自動車道上田菅平ICから車で約10~20分
※上田バイパス「山口」信号を北上すると、途中で表参道と裏参道の分かれ道の看板があるため、それに従って進む。